「糊」 | Sphera Solutions, Japan株式会社


「糊」

 新聞に昔のヤマト糊容器の写真が載っている。広口のガラスびんにブリキの蓋。蓋には的に当たった矢がプレスされている。この容器の記憶はかすかに残っている。懐かしいけれど、ふだん思い出したことはなかった。

 

 使い続けているうちにブリキの蓋に錆が浮いてきている。糊のびんを囲んで子供が騒ぎながら紙細工をまん中に広げた大きな台紙に貼り付けていた。べっとりした糊を指にいっぱいつけて折り紙を貼る。目をつぶるとそんな光景が浮かぶのだ。

 

 “貼る”、“張る”そして”繋げる“。接着って大切な機能なのだと改めて思う。

 

 街の木造住宅建設現場を見学すると気が付くことがある。住宅建築の構造材として柱や梁に大きな断面の集成材が使われている。接着材が発達したおかげで、細かな角材や薄い板材を接着し、一体化された建築用構造材ができるようになった。

 

 2010年に公共施設などの木材利用を促す法律が施行されており、大手ゼネコンでは木材の使い勝手を高める研究も続いている。大林組は木造住宅などで使用される国産の小型部材を組み合わせて大型部材にし、耐久力を高める工法を開発したという。木材を利用した公共建築がもっと増えてほしいと常々思っている。

 

 池上線の戸越銀座駅は降りたことはないけれど、車窓から見ると壁が木肌のきれいな駅だ。東急電鉄の「いい街 いい電車 プロジェクト」の一環として、木造駅舎の雰囲気を踏襲して、「木になるリニューアル」を行ったのだ。

 

 LCA(ライフサイクルアセスメント)解析でも構想過程では色々なことを考える。各ステージの特徴となる新プロセスあるいはプロセス群があるのか。……そんな中で接着プロセスというのも今後の注目ポイントだ。集成材の場合でも、接着剤の使用をいかに量的に抑えるか、環境にもやさしい接着剤を使用しているか、木材加工の段階で接着剤の飛散をどのように少なくするかなど、色々気にかかる点はある。

 

 祖母は紙を貼る時は飯粒をしゃもじの上で、ツノベラで潰して糊を作っていた。(C)

コメント 1件

  1. skylineR31gts Says:

    私も長らく関東で暮らしていましたので、たぶん一度位は「戸越銀座駅」で下りたことはあったと思いますが、今となってはその様子が思い出せません。賑わいのある商店街があったのは何となく記憶しています。

    いずれにしても当時と現在では、大きく変わっているのでしょうね。「木になるリニューアル」良いですね。木造建築を大切にしていきたいですね。

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