「推測する力」 | Sphera Solutions, Japan株式会社


「推測する力」

 かかりつけの医院で、毎月定期的に診察を受けている。脈や血圧をいつもの通り看護師さんが診察前にチェックする。「ずいぶん日に焼けているのね」というので、庭の草刈りのための日焼けだと説明する。すると、看護師さんは、家の庭で「カメがいっぱい孵化して困っている」「草も困るけどカメも困る」という。

 

 「オスとメスだったのか、……2匹を庭に放し飼いにしていたら、土の中から500円玉ぐらいの大きさのカメがいっぱい出てきた」のだそうだ。

 

 何とかならないかと相談されても、答えようがない。ウミガメの孵化の映像を思い出した。私にできることは看護師さんから話を聞き「それは大変ですね」と同情するだけだ。発展性のない会話で申し訳ないと思った。

 

 りゅうぐうに行った探査衛星は砂を持ち帰ってきた。砂の中にある硫化鉄の結晶の中に、微量の炭酸水が閉じ込められていた。驚くことは“小さな砂粒”から、学者は壮大な宇宙の歴史を説明できるということだ。「太陽光が届かないほど遠い場所で、零下約200度以下の環境で作られる。その後、氷が解けて岩石や有機物と反応し、多くの鉱物ができた」という。砂の硬さや密度、熱伝導率などの測定結果を基にシュミレーションし、りゅうぐうの母天体の形成過程までも推測してくれている。

 

 「母天体は、約46億年前に太陽系が形成されてから約200万年後にできた。太陽近くの高温の環境下でできた微粒子が太陽光の届かないほど遠くに移動し、氷やドライアイスを取り込んで直径約100キロメートルの母天体になったという。母天体はその後、太陽系の内部に移動。いまから約8億年前に直径約10キロの天体が衝突して壊れた。衝突部分から離れたところの破片が集まって、今のりゅうぐうができた。」

 

 冷静な事実を見分ける眼力と研究専門分野の統総合的な知見が必要である。専門分野で徹底的に考え抜いた人がこのような説明ができる。学問の大切さが身に染みる。惑星科学を研究している東北大学中村教授や研究されてきたチームの方々に頭が下がる思いだ。

 

 環境保全。SDGs推進にも掘り下げの深さと総合力が必要なのかもしれない。(A)

コメント 1件

  1. skylineR31gts Says:

    「亀は万年」と言いますが、繁殖力と言いますか、生命力と言いますか、すごい力ですね。まさか家の庭でそのような事態に陥るとは夢にも思わなかったでしょうね。

    りゅうぐうのお話は、スケールの大きいダイナミックな出来事ですね。そのような中から地球が生まれ、やがて亀も誕生し、家庭の庭でも数を増やしていく、規模の違う話とは言え、太陽系から亀まで繋がっているのですね。

    国の指導者が、宇宙から小動物までの広大な視野で物事を見ることができれば、国と国の争いもなくなりそうですが・・・

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