「カプセルタワー」 | Sphera Solutions, Japan株式会社


「カプセルタワー」

 銀座の「中銀カプセルタワー」の解体工事が始まった。海外からの知人を浜離宮に案内したとき、通りすがりにあるカプセルタワーが気に入ってしまった。「これは、解体する話が数年続いている」と説明したが、解体などとんでもないといいって、シャッターを切っていた。

 

 このビルは子供のころから自分でも好きだった。四角い角柱が立っているようなビルに比べれば造形的にも刺激的。11階建てで、エレベーターや階段がある中央の塔にカプセル型の居室が取り付けられている。居室であるカプセル(床面積10平方メートル)140室は円形の窓を外に向けており、未来的な外観なのだ。葡萄の房のように、カプセルが付きだしているところもユニークだ。建築家の未来に向けた夢のフォルム。都市の機能や人間の活動規模に応じて、カプセルを入れ替えれば建築物自体が再生するメタボリズム(新陳代謝)建築だと評判になったものだ。

 

 1972年完成し、ビジネスマンのセカンドハウスとして分譲された。カプセルは用途に合わせて使用者が空間をアレンジすれば、それなりに快適な場所になったようだ。しかし老朽化で痛みはひどく、メンテナンスの試算では全カプセルの交換に20億から30億円が必要で、所有者の間でも保存か立替かで意見が割れたそうだ。保存してくれる海外企業への売却の話もコロナで途切れてしまったという。

 

 今回の解体で裏話が出ている。カプセルは25年ごとに交換予定だったが、一度も交換されたことがない。カプセルの入れ替えは実際には工事が困難だったという。コンセプトは良かったが、そのアイデアを支える周辺技術がまだまだ未熟だったのかもしれない。

 

 環境対応でもありそうなことだ。アイデアにおぼれず、着実な温暖化対策を定着させよう。LCAを大いに利用しよう。アイデアは本当に効果があるのか“検証”しよう。

 

 このカプセルの20数個は取り外し、国内外の有名美術館に寄贈されるという。そのほか宿泊施設としての再利用も考えられている。

 

 一時の夢にどこかの美術館で再会したい。(C)

コメント 1件

  1. skylineR31gts Says:

    「中銀カプセルタワー」の解体の件はニュースで聞きました。私、銀座に15年近く通勤で通ったのですが、カプセルタワーの存在に気づきませんでした。何と感度の低いことか、一度、じっくりと眺めておけば良かったと後悔しています。

    「コンセプトは良かったが、そのアイデアを支える周辺技術がまだまだ未熟」なるほどですね。そういうことはありますよね。逆に言うとアイデアが早すぎたということでしょうか。着実に実施するためには、奇抜なアイデアだけでなく、それを支える革新的な技術が必須なのですね。

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