「送電」 | Sphera Solutions, Japan株式会社


「送電」

 この春、新しい技術の芽の気配。報道された技術は“送電損失ゼロへの挑戦”だ。新年に“政府は再生エネ普及へ送電網”という記事が新聞に載り、総額2兆円超の投資計画を想定しているという記事を見たばかりだ。

 

 JR系の鉄道総合研究所がコストを大幅に減らした世界最長級の送電線を開発したという。以前より従来型の送電では電線の電気抵抗のために送電ロスが発生することは知られている。送電線を冷やして超電導状態にすると電気抵抗はゼロになり、損失をなくすことができる。しかし、長距離にわたるの電線をマイナス269度に冷やす必要があったため、コストの問題が実用化に立ちはだかっていた。

 

 今回、マイナス196度で超電導状態になる素材の開発が進み、冷却材を液体ヘリウムから液体窒素に切り替えられるようになったのがポイントだ。コスト削減に大きく寄与する。超電導線の構造は簡単にいえば。ケーブル中の超電導材料の中心部と周辺部に冷却剤を流す構造になっている。つまり……効率よく送電する数々の工夫がなされている。

 

 鉄道総合研究所では世界最長級の実用レベルの1.5キロメートルの送電線を宮崎県に設置して実証試験を始めている。鉄道に必要な電圧1500ボルト、電流数百アンペアを流せる。超電導線は電圧が下がりにくいため、電圧維持のための変電所を減らせるメリットがある。変電所は都市部では3キロメートルおきに設置し、維持費は1カ所で年2000万円程度とされている。変電所の数が減れば維持費も抑えられ、その分冷却剤使用の超電導線に投資することもできる。

 

 日本エネルギー経済研究所によると、国内では約4%の送電ロスが発生しているという。日本全国の電力事情を安定的に運用するためにも、日本を覆う送電網の基幹部分にでもこの超電導送電技術を活用してほしい。日本列島に偏在する電力資源を平準化する動きが加速することを期待します。

 

 全国の鉄道会社の送電ロス4%をなくすと、一般家庭約16万世帯分の電力を生み出す。鉄道の超電導送電時代は目の前まで来ている。

 

 超電導の時代。磁気共鳴画像装置(MRI)も、リニアモーターカーも。工場も。(C)

コメント 1件

  1. skylineR31gts Says:

    以前から送電ロスの課題が指摘されていましたが、いよいよ実用化に向けて始動できるかどうかのところまで来たようですね。まずは鉄道の電線からでしょうか。
    将来的には家庭に供給している電線も超電導技術が導入されることになるのでしょうね。その際には、電柱ではなく電線の地下化も一緒に進めて欲しいところです。そのためには莫大な費用がかかりそうですけど・・・。

    直近のコロナ対策を始め、自然災害への備え、エネルギー問題、地球温暖化問題への対応など、個人もそうですけど国も対応しなければならない課題が山積しており、お金もかかりますね。優先順位はあるでしょうけど、様々な課題に向けた対応を並行して着実に進めていければと思います。

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