「地層の記録」 | Sphera Solutions, Japan株式会社


「地層の記録」

6550万年前に恐竜時代が終わったのは巨大隕石が衝突したためだという。千葉工業大学惑星探査研究センターの松井孝典所長(惑星科学)らが参加する国際チームがそう結論付けた。ビックリするのは地層の研究論文や、関連する様々な研究論文を精査して結論が導かれたということだ。

 

直径10キロから15キロの小惑星が秒速20キロメートルでメキシコのユカタン半島の側に衝突した。その結果マグニチュード11以上の地震と高さ300メートルの津波が起きた。1千億トンから5千億トンの硫酸塩やすすが放出され、太陽光を遮り、酸性雨を引き起こし、生物の6割が絶滅したと読み解かれている。大きな環境変化が突如起きたのである。

白亜紀と古第三期の境目の地層を調べて分かったことだ。小惑星がもたらしたとみられる希少な金属イリジウムや衝突で変質した石英が地層に含まれ、ユカタン半島から遠くなるほどその地層が薄くなっている。地層の中には恐竜の化石のほかに、大気中の混入物まで保存されている。地層が地球の歴史を大切に記録してくれていたのだ。

 

今、環境対応が進められているが、人類が環境に「よい」として使っている材料や金属の名残、それに環境対応という活動の痕跡も地層の中に記録されていくのだろうか。

 

電池の開発が環境対応技術のキーテクノロジーになるという説がある。鉛-酸電池、太陽電池、水素燃料電池、ニッケル水素電池、リチウムイオン電池、金属空気電池など多種多様な電池が開発されているが、これからどれがどの分野に応用され、進化するのか。

環境車の電池リサイクルもそろそろ事業化の機運にある。電池の生産に必要なレアメタルの確保が大きな課題で、長期的に電池を利用していくためには一定量の電池を再利用する仕組みが必須であると考えられている。レアメタルの輸入依存度をさげ、原料調達価格の安定にもつながるためだ。完成車メーカーや非鉄金属精錬メーカーはリサイクル技術開発と回収システム構築に進みだしている。リサイクルのLCAを行い、合理的なビジネスプランが成立することを願っている。

 

環境に優しい技術も地層に記録される。未来の人類や高等生物が地層を見たとき、「人類が見事な環境対応を進めていた」と解読して欲しい。21世紀の電池廃棄物の地層の中からニッケルやコバルト、リチウム、マンガンなどが急激に減っていて、電池のリサイクルが定着していたと評価されるかもしれない。(L