「残余空間」 | Sphera Solutions, Japan株式会社


「残余空間」

 家具が置かれていない新しい部屋に入ると、部屋の広さを感じる。しかし、広い空間を維持し続けるのは大変難しいことだと最近実感している。“空間をうまく使わないといけない”これを私の基本コンセプトとして生活していくつもりだ。

 

 習字の練習で使っている部屋も、当初は何も無くて、ただお隣の桜の梢が見えるだけの明るい部屋だったが、本箱を入れ、机と椅子を入れた。いざ墨筆の練習を始めると色々な小物がほしくなり、その小物をしまっておく空間が必要になる。書き損じた半紙を一時保管する場所も必要になった。筆使いの練習という簡素を旨とすべき行為であるべきなのに、部屋自身が簡素でなくなって、統一感なく小物があふれる部屋となってしまった。

 

 半導体最大手インテルの創始者のひとりであるロバート・ムーア氏は1965年に、集積回路の進歩を展望する論文で「半導体集積回路の集積度は1年半から2年で倍増する」という予測を発表した。そして、驚くことに、その通りに現在まで進んでいる。ムーアの法則だ。半導体技術者に対して技術開発の考え方を示してくれたようなものだ。

 

 50年もの寿命を持ったムーアの法則の言い回しを拝借して、自分の生活基本コンセプトを表現すると……こんな風に…思える……「人間は家と言う生活空間の中で、便利さを求める欲求は1年半から2年で倍増することになり、その結果、家の中に多くの機能を取り込み、家の空間はその分浸食されていく。」

 

 やはり、言葉を借りて自分の考えをまとめるのは切れ味が悪い。とにかく、あれもこれもと欲張って物を増やすことはこれからやめようと思う。少しの不便を我慢すれば、あるいは、体を動かしさえすれば事足りることのために、部屋の内臓を増やすのはやめよう。

 

 部屋が何か雑然として来たら、生活力が衰えてきたサインだと思って間違いない。信頼するLCA(ライフサイクルアセスメント)手法でも空間の量を環境問題として扱った例を知らない。そのうち残余空間量とか可処分空間の維持のしやすさなどが事務所や家屋の快適さを示す基準になる時代が来るだろう。

 

 豊かな残余空間を持つ人は、心の空間も大きいに違いない。(L)

コメント 2件

  1. skylineR31gts Says:

    いつも楽しくブログを拝見しておりますが、今日もpeasia様の豊かな感性と言いますか、鋭い視点と言いますか、たいへん興味深く拝読致しました。

    私などでは、ムーアの法則(これ自体を知りませんでしたが)を生活空間に当てはめるなど思い付きません。

    それにしても’広い空間‘のお部屋をお持ちで羨ましいです。私の場合には、そもそも狭い部屋しかないので、それをどう活かしていくかを常に考えていかなければなりません。

    効率的な部屋の利用に対しても評価指標ができると有難いです。

  2. Velvet Says:

    A really good answer, full of ratitnalioy!

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