「肥後守」 | Sphera Solutions, Japan株式会社


「肥後守」

年忘れの温泉会というのだろうか。友達とひなびた里で温泉を楽しんできた。駅の観光案内で宿へのアクセスを聞くと、「村営バスの時間がよく分からないから、宿に電話して路線バスの終点まで迎えに来てもらった方がいいですよ。」とアドバイスを受けた。

畑がまばらになり、山が始まろうとしている地点に宿はあった。湯治客も利用する宿だ。遠くに近年再現された炭焼釜から白い煙が流れ、幹や枝が目立つ雑木林の上にたなびく。山裾に向かって畑が続く冬景色。小学校のころ音楽の教科書には文部省唱歌「冬景色」とか「村祭り」、「村の鍛冶屋」など日本の農村をうたった歌が多かった。その歌に添えてあった絵を目の前にしているようだ。田舎の原風景だ。

温泉からの帰り、宿の人に送ってもらった道の駅の一角に市が立っていた。あたかも村祭りのように、近隣の店や農家が露店を構えていた。そこに刃物屋が商品を陳列している。昔の鍛冶屋だ。この典型的な山里の景色と鍛冶屋の組み合わせから頭の中では、「村の鍛冶屋」の一節が流れる。「暫しもやまずに 槌打つ響き……」。

切れ味のよさそうな包丁、農作業用の鎌、山で枝落しに使う鉈。近くの農家や林業関係の人が使うのだと思うけれど、不思議な形をした刃物が一杯ある。

刃物の研ぎではこのあたりで一級の腕だと自慢する鍛冶屋のおやじさんと山菜採りに使う刃物談義に花が咲いた。そして、小学校時代に使った肥後守が無性に懐かしくなって買った。「これは自分のところで作ったものではない。卸しだけど、この刃は青紙を割り込んだ刃で上質だ。鉛筆だけでなく、髭も剃れるまで研ぐことができる。」と、高級な鋼であることを説明してくれた。

村の鍛冶屋さんの気さくな顔を思い浮かべながら都会へ帰る。列車の窓を飛んでいく景色を見ている。来年の自分の指針ですが……「 LCA (ライフサイクルアセスメント)の槌を打ち続ける。そして、 LCA ソフト普及と LCA の活用は“村の鍛冶屋スピリット”で」。……昔の唱歌「村の鍛冶屋」では「 あたりに類なき 仕事のほまれ」と歌われている。手元の 肥後守は「ほまれ」を刻むためのお守りだ。( C

コメント 1件

  1. skylineR31gts Says:

    「ひなびた里で温泉」、「田舎の原風景」、「鍛冶屋のおやじさん」・・・、いい旅をなさいましたね。歳の暮れに1年頑張られたことへのご褒美でしょうか。最高ですね。羨ましいです。

    日本の原風景を大切にしたいですね。この貴重な財産をいつまでも残していきたいですね。

    そのためにも是非とも「LCA(ライフサイクルアセスメント)の槌」を打ち続けて下さい。

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