「おカイコ様」 | Sphera Solutions, Japan株式会社


「おカイコ様」

 大河ドラマ「青天を衝け」は養蚕業の盛んな農村で育った主人公の話なので、ふんだんに桑畑のシーンが出てくる。小さいころ仲間と桑畑と桑畑の間を走り回っていたのでとても懐かしい。

 

 走り回ったあの村では、カイコは神様のような存在だった。カイコを桑の葉で育てれば、高価な絹糸の化けるのだから、とんでもない化学的魔術なのだ。だから、他の虫は潰すことができるけれど、カイコ様に意地の悪いことはできない。

 

 人間のために存在しているようなカイコ。酪農でいえば乳牛。養鶏でいえば鶏。家庭でいえば猫や犬みたいなものだ。手の上を這わせても冷たい感触があるだけで、毛虫のように毛を心配することもない。家の外まで幼虫も成虫も逃げ出すこともない。ある意味完全なペットなのだ。カイコの成長を見ながら生命のサイクルを学んだ。

 

 幼心にカイコを神様のように慕う風土に浸って成長できたことは感謝すべきことかもしれない。自然に対する尊敬の念を持ち、都会では得られない価値を体験できたからだ。そして今、環境を守りたいとLCAの普及に努めている。

 

 カイコから学んだことはもう一つ。葉を毎日刈り取り竹かごに入れて持ち帰る。葉をカイコに供給し続けることが魔法を実現させる力になっている。つまり単純なことも継続すると“価値の転換につながる”いことだ。

 

 平成25年、2万5千分の1の地図から桑畑記号(英字Yの縦棒の末端から右に地面を書く)が消えた。YSLというイブサンローランのロゴマークに似たやつだ。戦後、養蚕よりも食糧生産が盛んになった影響もあるが、今や昔の桑畑は果樹園や住宅地に姿を変えてしまっている。桑畑と表記するほどの地域が残されていないのだ。

 

 桑畑は少ない。カイコも昔のように農村で飼育することはないのかもしれない。でも、ずいぶん多くを昔の養蚕農家から学ばせてもらった。

 

 自然とヒトのかかわりを学びました。おカイコ様のおかげだと思います。(C)

コメント 1件

  1. skylineR31gts Says:

    大河ドラマ「青天を衝け」私も見ました。あの撮影のため広大な敷地を借りて村を再現しているとお聞きしました。さすが大河ドラマ、スケールがでかいですね。

    そうですか、ご幼少の頃、桑畑の間を走り回っていらっしゃったのですね。自然の中で育って来られたのでしょうね。それで時々「自然豊かなお庭」のお話も登場してくるのですね。

    蚕の生命のサイクル、人類も見習わなければならないのかもしれませんね。

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