「フィルター」 | Sphera Solutions, Japan株式会社


「フィルター」

サッカーW杯が始まって、初めてブブゼラという応援グッズがあることを知った。南アでは「ブー」+「ボー」+「ビー」+「ンー」という大音量の応援の中でサッカーはおこなわれる。これだけのことだが、この音と文化は南アの存在感を世界に認識させるには十分なインパクトがある。

 

南アからのサッカーの中継をみる場合、わが家でもTVの音量をいつものレベルから2段階ほど下げてみることにしている。それでも耳障りなのだが、慣れることはおそろしいもので、そのうち「ブブゼラ」の音だけをフィルターにかけて認識しないように中継を観戦している自分を発見した。W杯限定のにわかサッカーファンなので、有名選手がどうもいま一つとか、試合が想定内で展開されると、テレビの前で横になって寝入ってしまう。ブブゼラの音が部屋を満たしていても。

 

フィルターをかけて情報や信号を選択しなければ、とても毎日過ごしていけないとはいえ、なんとなくフィルターをかけて避けていることがないだろうか。

10月に名古屋で生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)が開かれる。豊かな生物種がバランスを保って共存する自然。企業活動は原材料の確保など直接、間接に自然界から恩恵を受けている。地球温暖化問題ばかりが注目され、「環境問題とはCO2を減らすことだ」と環境問題に自分でフィルターをかけてしまっていないだろうか。使用する材料の希少性やその材料を作るための環境負荷を考えることなどは眼中にないという態度を取っていないだろうか。

 

LCA(ライフサイクルアセスメント)はサステーナブルな状態をどのように実現するかを見る道具として発展して来た。LCAソフトでは温暖化ガスやCO2量の把握は“もちろん”できるのだが、大気汚染、有害化学物質、オゾン層破壊、生態毒性、酸性化、富栄養化、光化学オキシダント、廃棄物、資源消費など総合的に見ることができる。この複眼的な視野が大切だと欧米の研究者からはよく言われる。

 

複眼的な視野で工業製品も消費財もバイオマス資源も幅広く見て行きたい。専門性に磨きをかけなくてはと必至である。COP10 では森林の回復というテーマもあるようだ。森林や木材の環境的な評価にもLCAを使った評価事例はかなりあるが、輸入材に負けない国産材の商品力と価値をLCA的発想で検証したいと考えている。(A