「リチウム様」 | Sphera Solutions, Japan株式会社


「リチウム様」

リチウムイオン電池の記事をよく見かける。携帯電話やパソコンの電源として、また2009年に三菱自動車や富士重工業の電気自動車が電気自動車を販売し、自動車の基幹部品としても注目を集めているからだ。レアメタル(希少金属)といわれるリチウム自身は資源が枯渇することはないのか?いつかリチウムイオン電池を越える新型電池が突如出現するという秘かに進行するシナリオはないのか?自動車好きな私は素朴な疑問と好奇心をもっていた。

 

講演会で専門家の話を聞いて、疑問のいくつかは解消した。

 

鉱業審議会レアメタル総合対策特別小委員会ではa)現在鉱業需要があり、今後も需要があるもの、b)今後の技術革新に伴い工業用需要が予測されるもの31鉱種をレアメタルと指定している。レアメタルの指定は産業的な見方が強いのであって量が少ないのではない。日本では100%輸入であり安定確保が問題の資源だと理解するのが正しいようだ。

地球上に薄く散らばった元素であるリチウム。海水中にも0.18ppm(0.000018)ある。鉄や銅など多くの金属は鉱石から採れるが、リチウムはその生産量の7割を塩湖のかん水(塩分を多く含んだ水)を天日で干して集める。かん水には0.1%以上の濃度で含まれるからだ。世界全体の推定資源量は11002900万トンあり、資源量という見方をすれば500年分以上は今でもあるので、コストは別として、石油のような資源枯渇の心配は今のところなさそうだ。

 

二次電池では、室温下でも陽極と陰極の間をイオンが素早く動くことが要求され、原子番号3のリチウムはぴったりなのだ。「リチウムイオン電池の次の電池は何か?」という問いには正極、負極、電解質、セパレーターを改良した「次世代型リチウムイオン電池」と答えるより他はないと言われている。リチウム様は軽量級だが、けっこう偉くて頑張りや。

 

電気自動車は従来の自動車と同じ用途や概念で捉えてはいけない。充電する新しい乗り物だという発想の転換が必要だともいわれている。しかし、やはり航続距離は延ばしてほしいと思う。次世代型リチウムイオン電池の進歩に期待している。あるいは水面下の秘かな新型バッテリー研究を期待している。

地球温暖化防止のために電気自動車使用の場合、少し我慢する度量を持たなくてはいけないのだろうか。「後続車両が遅れているため、時間調整のためにしばらく停車します」と電車の車内放送がある。あの時の「なぜ自分が乗り合わせた電車が後続車のために遅れるのか」という表に出せないが内に湧き上がるモヤモヤ感に似ているようにも思う。(A