「サラサラ社会」 | Sphera Solutions, Japan株式会社


「サラサラ社会」

水の抵抗を少なくすることで悩んでいる業界が二つある。一つは昨年来高速水着の競泳での貢献度が明らかになったスポーツウェア業界。もう一つは船舶の運送での燃費を上げたい船舶輸送業界である。水はサラサラしているイメージがあるが、速度が増すほど水の抵抗がエネルギー消耗を増やしてしまう。

国際海事機関(IMO)によると、国際海運のCO2 排出は約8.7億トン(07年)。世界の総排出量の2.7%でドイツ1国分に相当するというのだ。国際物流の9割を担う船舶。その燃料を節約し、二酸化炭素(CO2)の排出を抑えることに熱が入っているのもうなずける。

  船底に小さな泡を流して水との摩擦を減らす新技術も開発中だ。空気圧縮機で直径数ミリの泡を船底に出す。泡は船底を流れて薄い空気の層を作り、水の抵抗を減らす。平たい船底は、泡がとどまりやすいという。圧縮機を動かす燃料の分を差し引いても、全体で燃料消費が10%減るという。空気の膜の上を動くパレット移送に似ている。

船底塗料の改善もある。日本ペイントと商船三井は燃費が10%改善する船底塗料を共同開発すると報じられている。塗料に水に触れるとゲルに変化する特殊な成分を配合する。塗装膜の表面にある凹凸部分をゲルが埋めて表面をより平らに近づけることで、摩擦抵抗を低める。イルカのイメージだろうか。

 

競泳水着の開発では、メーカー各社とも水着表面の抵抗を減らすことに腐心している。高速水着の火付け役、レーザー・レーサー(LR)を作った英スピード社は体そのものが生む抵抗に注目。女性用で水着の表面の半分程度をポリウレタン製のパネルで覆っていた。水着で締め付けて体の表面積を減らし、抵抗も減らすという考えだった。しかし、今年から水着の規則が変わり、素材は繊維のみとなったため新たな競争状態となっている。

しかし、スピード社のアイデアのように移動体の形状から来る抵抗も無視できない。貨物専用船では無理かも知れないが、高速船では船舶自体が生む抵抗を減らすように船底の形状研究がさらに進むのかも知れない。

 

水がサラサラ流れるように、省エネ社会はすべてがスムーズに流れ、移動に抵抗がないことをめざしている。

そのスムーズな移動という点で個人的に気になるのが、キャスターつきのキャリーバッグを使う人が増えていることだ。使っている人に悪気があるわけではないが、駅など混雑した場所で障害物になることが多い。便利さまで省エネ社会のロジックではカバーできないということのようだ。(L