「富岡製糸場」 | Sphera Solutions, Japan株式会社


「富岡製糸場」

4 月末にユネスコの諮問機関、国際記念物遺跡会議 ( イコモス ) から「富岡製糸場と絹産業遺産群」の世界遺産登録の勧告が出た。 6 月に産業遺産として世界遺産の仲間入りの正式通知が届くはずだ。

群馬県の金古に子供のころ住んでいたので養蚕にはどっぷりつかっていた。昔の群馬県の農家は独特の構造を持っていて、子供のころ、階段を上がり蚕棚が並ぶ 2 階に上がってみるとそこは別世界の昆虫工場のようだった。糸をつむぐ姿や、冬場の機織り姿も忘れがたい。今では考えられないアナログな時間の経験だ。蚕は軟らかくて、特に嫌な汁も出さないし、かみつくこともしない。逃げないし、フレンドリーだ。目が見えなくなったおじいさんも、死ぬ前に蚕を触ってみて、順調に育っていることを指先でさとり、安らかに冥途に旅立ったという話を聞いたことがある。

蚕は家畜化された昆虫で、野生には生息しない。蚕は野生回帰能力がなく、人間による管理がなければその一生を全うすることもできない。幼虫は腹脚の把握力が弱いので、野外の桑の木に放っても風などで地面に落ちやすく、鳥などに捕食されてしまう。

とにかく、どうしてこのような人間のために存在する昆虫が出現したのか不思議だ。そもそもその先祖が分からない虫で、ひたすら人にすがって生き続けてきている生物なのだ。イコモスは、富岡製糸場について「養蚕と日本の生糸産業の革新に決定的な役割を果たし、日本が近代工業化世界に仲間入りするカギとなった」と指摘している。絹糸や絹織物の恵みに加え、社会を変える原動力になってきたと評価された。

「独立行政法人農業生物資源研究所は 2000 年に世界で初めて遺伝子組換え技術を開発した。 2008 年には、オワンクラゲの緑色蛍光タンパク質( GFP )によって光るシルクを作ることに成功した。」というニュースを覚えておられる方も多いと思う。

「おカイコ様」の未来は明るい。美しい繊維が作られるかも知れない。医薬品製造の主役にすらなるかも知れない。その時、工程の LCA を行ってみたい。従来の工業プロセスに比べて、驚くほど蚕を利用する生物工場の効率が良いかも知れない……とも推測する。( A

コメント 1件

  1. skylineR31gts Says:

    「富岡製糸場と絹産業遺産群の世界遺産登録」おめでとうございます。早く正式通知が届くと良いですね。

    そうでしたか、蚕の野生は存在していないのですね。人間の管理の下でないと生きていけないなんて。人間に素敵なシルクを提供して頂いていますが、蚕にとっても人間に守られて生きているという関係にあるのですね。

    どちらかと言うと、蚕が人間に働かされているイメージでしたが、WIN-WINの関係と言いますか、共生と言いますか、良好な関係にある訳ですね。

    それに「工業プロセスよりも蚕の生物工場の方が効率が良いかもしれない」なんて、まだまだ人間は自然界に学ぶべきことが沢山あるようですね。

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