「爪の泥」 | Sphera Solutions, Japan株式会社


「爪の泥」

川村記念美術館に初めて行ってみた。今回の展示は「フラワースケープ-画家たちと旅する花の世界-」だ。実は、有元利夫「花降る日」が展示されていることを聞き、もう一度この絵を見るために千葉県佐倉までのドライブだった。“赤土色の空から、細かい花びらが、多すぎず少なすぎずぱらぱらと降っている、やさしい空気の中に髪の長い人が……。”

アンディ・ウォーホル…なるほど。知らなかった画家の作品も展示されていた。三越の図案部に所属して大正時代にポスターなどを手掛けたという杉浦非水。非水の絵は日本画の伝統を踏まえた植物画で、心の景色におのずと重なり一体となる。確かに、アジサイってこんな枝ぶりだ。

日本にこれほどの庭園スペースを持った美術館が存在することが驚きだ。白鳥が泳いでいる池の周りは芝生の緩やかな斜面が続いている。新緑の香りを楽しみ、つつじを観ながら庭園を一周できる。周りの丘を少し下ると、林を抜ける遊歩道がある。

遊歩道で、マムシが鎌首をあげている姿に色も形もそっくりな奇妙な花をたくさん見てしまった。帰宅後、牧野富太郎植物図鑑を見て分かったのだが、サトイモ科のウラシマソウという。鎌首を構成する2枚の筒状の花ビラ(?)の中から50センチほどの黒い紐が出ている。ハリーポッターに登場したら、魔法世界では鞭のように足に紐をからまる不思議な植物としてキャラクター化されただろう。日本人はこの紐を釣り糸に見立ててウラシマソウという。グロテスクな形や、赤黒い色を好む山野草愛好家もいるらしいのだが、私の好みではないのでパスしたい。

子供の頃から祖母の庭作業に付き合ってきたので、土をいじるのは好きだ。植物の生命力の強さについても耳にたこができるほど聞いてきた。ゴールデンウィークのころ常緑樹は一斉に新芽を出し、古い葉を地面にまき散らす。雑草は想像以上に広いエリアに種を飛ばし、根をはり巡らす。

5月は植物との陣取り合戦が始まる月だ。私は除草剤を使わない主義で、雑草は引き抜くことにしている。除草剤が強すぎた苦い経験があるあるからだ。土をいじると手が汚れる。一休みしながら、シャープペンシルの先で爪の隙間に詰まった泥をほじくっている。バイオ関係のLCAを考えながら…泥を除いている。この分野は面白いと思う。(A

コメント 1件

  1. skylineR31gts Says:

    ‘ウラシマソウ’ですか、どんな草だろうかと思い、最近買い替えたばかりの電子辞書で調べてみました。確かにご説明のとおりのようですね。

    桜の季節も終わり、これから新緑の季節ですね。子供の頃は田舎に住んでいましたので、それこそ自然に‘自然’と接することが出来たのですが、最近では土に触ることなどめったにありません。

    もっと積極的に自然と接するようにしなければいけないと思っています。そうすればたぶん「自然への感謝の必要性」をあらためて思い起こしてもらえるのではないでしょうか。

    植物というのは本当に生命力が強いですね。私の田舎に「ボタ山」があります。石炭のぼたを積み上げた円錐状の人工の山のことです。30年程前までは、確かに‘ぼた’がむき出しとなったままの緑のない山でしたが、今は緑豊かな普通の山となっています。特別に植林をしたという話は聞いていませんので、おそらくは自然に木々が育っていったのだと思います。植物の生命力を感じずにはいられません。

    自然を大切にして共生していきたいですね。

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