「真空管式」 | Sphera Solutions, Japan株式会社


「真空管式」

だいぶ寒くなってきた。真空管式ステレオアンプに手をかざして、暖をとった結婚早々の冬を思い出す。もちろん、石油ストーブも持っていたが、わが家で圧倒的なスペースを占めた手作り真空管式のステレオセットは無視しがたかった。このセット、実は先輩のご指導を頂いた賜物だったが、妻の前では「真空管式ステレオアンプとは‥‥‥。ノイズ防止の秘伝は‥‥‥。このスピーカーボックスの板の厚さは‥‥‥。」と、オーディオについての即席の知識を自慢げに疲労したものだ。

抵抗、その他の素子やスイッチ、真空管、アルミシャシー、大きくて、重いスピーカーボックス等、すべての材料を秋葉原で買い集めた。音も軟らかく、澄んだ音色だった。部屋全体が音楽に浸されるような環境を実現できたが、問題は熱であった真空管を使っているからだ。気密の良い狭いアパートでは熱がたまってしまう。心に響く音を聞くために、これほど熱としてエネルギーを浪費しなくてはいけないのかと思ったものだ。

自動車の電動化が盛んであるが、半導体の時代になっても、大電流を制御するために、メーカーは回路の冷却に頭を使っていると聞いている。熱としてエネルギーが無駄に捨てられているということに通常は頭が回らない。

富士通研究所は、サーバーを集中管理するデータセンター向けの節電技術を開発したという。サーバーのCPU(中央演算処理装置) から出る熱を回収し、エアコンや冷蔵庫に使われているヒートポンプを介して冷やし、加熱を防ぐ。データセンターに導入すれば、空調の消費電力を最大20%減らせると見ている。

今までの省エネは、エネルギー源を選択することでもあった。これからは、エネルギーを無駄なく利用するかという視点も大切になってくるだろう。節電するためのシステムを開発しなくてはならない。節電方法の比較検討というLCAも出てくるはずだ。

米国、カナダ、ギリシャなどで由紀さおりさんの新作アルバム(米オレゴン州ポートランドが拠点のジャズオーケストラ「ピンク・マルティーニ」と共演したアルバム「1969」)がチャートの最上位に躍り出たというニュースがあった。アルバムにも収められている「夜明けのスキャット」はあの真空管式ステレオで深夜に聴いていた。ビロードの漆黒の闇から反響しながら響いてきたイントロ部分を忘れない。(C)

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