「材料選択」 | Sphera Solutions, Japan株式会社


「材料選択」

9月に米国の制御不能状態であった上層大気観測衛星「UARS」が太平洋に落下した。10月にはドイツのエックス線天文衛星「ROSAT」がインド洋に落下した。燃え残った破片が人にあたったとの報告はない。しかし、これって恐ろしいことだ。自分ではリスクをコントロールできない頭上からの災難だ。どのように対処したらよいのか。“皆様、さようなら。宝くじに当りたかった!”というメッセージでも携帯していれば、漫画となる。

昨年のはやぶさの探査カプセル回収では、本体はきれいに分解し、花火の一筋のように空中で燃え尽き、カプセルだけが地上に達した。衛星には、地球への落下時に地上の誰かに当たる確立を1万分の1以下に押さえるという基準があるそうだ。9月、10月に落ちた米国とドイツの衛星はこの基準ができる前に打ち上げられたものだ。(念のため)

宇宙空間も混んでいるため、衛星は運用終了から25年以内に地球に落として除去するように国際ルールで定められている。運用を終了する前に高度を下げ、いずれ地球に落下させる準備をする。これからの衛星は処理を考えた設計が必要になる。意図したタイミングで分解し、燃え尽きる。これがうまい設計である。チタンなどの溶けにくい金属は使わない。“不要になった衛星を安全に地上に落とす技術”に各国で力を入れているようだ。

いま、何が求められているのか?材料選択の達人はこれをよく理解することが必要だ。

自動車は従来の自動車機能を超えた商品に成長しつつある。だから、ボディー構造材料、バッテリー材料など材料選択をめぐって材料メーカー間で激しい競争が起きている。

ボディー構造材料を見ただけでも百花繚乱状態。今年の国際自動車ショーでは、「炭素繊維」をボディーに使った電気自動車が登場した。繊維業界が期待する新素材は、すでに航空機で実績を上げ、次の標的を自動車に定めている。炭素繊維は重さが鉄の4分の1、強さは10倍とされる。

最もポピュラーな軽量構造材アルミ業界も自動車業界には長年軽量効果をアピールしてきている。世界鉄鋼協会はEV用の軽量ボディーを共同開発したと発表。「ハイテン」つまり高張力鋼板を使えば3割強軽くなると訴えた。

自動車材料といっても、バッテリー、モータまで入れると材料選択の難関は果てしなく多い。材料選択が正しくなければよい設計は出来ないはずだ。材料のデータこそ、製品の価値を制する。だからLCAでもしっかりしたデータを使いたい。(C

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