「原因究明」 | Sphera Solutions, Japan株式会社


「原因究明」

20105月に打ち上げられた金星探査機あかつきは127日、逆噴射ブレーキをかけ、金星の周りを回る軌道に入る計画だったが、途中で姿勢を崩して燃焼が停止し、金星を通り過ぎた。金星と少しずれた軌道で太陽を回り始めた。失敗だったが、その原因をどこまで探ることができるかに関心が移った。私は大いに関心がある。

 

まず、あかつきは逆噴射を12分間予定していたが、223秒後に前転。直後に非常時の「セーフホールドモード」となり、噴射がとまった。突然停止してしまったということは外的要因も考えられる。金星の周回軌道付近に隕石のかけらがあった可能性はないか?他国が打ち上げた探査機の破片が漂っていることはないか?同じロケットで打ち上げたイカロスという宇宙帆船型実験機と接触していないか?など、色々調べられたようだ。

 

噴射方向がずれたということはエンジン自身の不調も考えられたに違いない。内的要因だ。エンジン噴射口は世界発のセラミックス製で、初の国産品。従来の合金製よりも高熱に強く燃焼効率が高くできる。ただ、セラミックスは割れやすいため、噴射口に異常かなどと新聞で憶測も流された。

軌道投入は失敗したが、今回幸いなことは、通信回線が正常に回復したことだ。金星探査機は「今のところ元気です」というメッセージ代わりに、金星を映した写真を送ってきた。探査機全ての機能チェックが再開され、エンジン以外に異常が見つからないというところまでこぎつけられた。燃料タンクの圧力、燃料や酸化剤の使用量、燃料の減っていく速さなど、色々なデータが集められているようだ。原因究明はこれからが佳境。おもしろくなりそうだ。こういうのが好きだ。

 

原因を知ることは、LCA(ライフサイクルアセスメント)でも基本中の基本。最も大切なことだ。LCAを使って生産性を上げ、環境的に前進したいなら、環境負荷の結果だけを見て満足していてはいけない。どうしてCO2の排出が少なくなったのか?多くなったのか?水の富栄養化の面で何故よくなったのか?この原因を探ることがなければ、製品の材料選定も、工程の改良や改善が進むはずもない。風土として定着もしないだろう。

 

201612月~171月にあかつきが11周、金星が10周したところで再接近する。再挑戦の可能性を少し残してくれた。部品や、電池の劣化が進まないようにと願う。そして、6年後、クリスマスカードか年賀状として金星の写真を送ってくれたらいいと思う。(A)

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